はじめに
「うなり」は、少しだけ振動数の異なる2つの波の重ね合わせで説明されます。
2つの波を重ねると、振幅が周期的に大きくなったり小さくなったりします。
では、ここで少し疑問が出てきます。
重ね合わせる波を2つから、さらに増やしていくとどうなるのでしょうか?
3つでは?
10個では?
100個では?
今回は、振動数が少しずつ異なるsin波を重ね合わせながら、その変化をPythonで見てみます。
まず数式で押さえる
振動数がわずかに異なる2つの波(音など)が重なり合うことで、音が大きくなったり小さくなったりと周期的に強弱が変化する現象のことを”うなり”と呼びます。
数式で表してみます。
$$
sin(\omega t)+ sin((\omega+2\Delta \omega) t)=2sin((\omega+\Delta \omega) t)cos(\Delta \omega t)
$$
$\omega >>\Delta\omega $なので、右辺の$sin((\omega+\Delta \omega)t ) \sim sin(\omega t)$となりこれは普通のsin波、$cos(\Delta \omega t)$はゆっくり変化するサイン(コサイン)カーブです。
$\Delta \omega=0.005\omega $としてpythonで可視化してみましょう。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
x = np.linspace(0, 1000, 20000)
# 重ねる波の本数
Ns = [1,2]
fig, axes = plt.subplots(len(Ns), 1, figsize=(10, 8))
for ax, N in zip(axes, Ns):
# k = 1, 1.01, 1.02, ...
k = 1 + 0.01 * np.arange(N)
# 周波数の違うsin波を重ね合わせる
y = np.sum(np.sin(k[:, None] * x), axis=0)
ax.plot(x, y)
ax.set_title(f"N = {N}")
plt.tight_layout()
plt.show()
上段が通常のsin波、下段が2個のサイン波を重ね合わせたものです。
重ね合わせにより、サイン波の振幅がゆっくりと変化していることが分かります。
これは、一般に言われる”うなり”です。
では、重ねる波の数を2から増やしていくとどうなるでしょうか?
波の数を2,5,10,20,100個と増やしてみます。

2個のサイン波の重ね合わせでは、振幅がゆっくりと変化していましたが、100個重ね合わせると
短い区間でのみ振幅が大きくなっていることが分かります。
ここで計算しているのは、波の振幅です。
振幅の2乗をとったものがパワーに相当します。
N=100でパワーをプロットしてみます。

ここまでの話は、波動で一般的に成立する話です。
特に光の場合で考えると、レーザーではずっと出力が一定でなく、特定のタイミングだけ発振されるタイプをパルスと呼びます。
更に、各周波数をモードとよび、位相差を固定して発振する方式をモードロックと呼びます。
機会があれば、レーザー発振について解説したいと思います。
位相
先ほどのような100個の波の重ね合わせは下式で書けます。
$$
\sum_{i=1}^{100}sin((\omega+2i\Delta\omega)t)
$$
$t=0$とするとsin波の引数は全て0となり、足し合わせる100個の波の初期位相が全て揃っています。
これはかなり特殊な状況ではないでしょうか?
100個の波の位相が全部ランダムとするのが現実に近い気がします。
そこで、位相にランダム成分を足し合わせてみます。
$$
\sum_{i=1}^{100}sin((\omega+2i\Delta\omega)t +\phi_i)
$$
$$
\phi _i \sim U(0,2\pi)
$$
pythonで計算してみます。

位相の取り方によって、パワーが大きく変わっていることが分かります。
上段が位相が揃っている場合、下段がランダム位相を加えた場合です。出力が変動していることがわかります。
ただし、下段の出力をよーくみてみると、上段と同じくらいの周期で出力が大きくなっており周期性が残っていることが分かります。
なぜでしょうか?
下段は確かに100個の波にランダムに位相を加えましたが、100個の波の位相差自体はずっと固定されています。 そのため、周期性が残るのです。
周期性を失わせるには?
パワーの周期性を失わせるには、100個の波の位相差をランダムとするだけでは不十分で、
さらに位相差自体が変動する必要があります。
つまり位相差$\phi$は空間的変動しないと周期性が残ってしまうのです。
$$
\sum_{i=1}^{100}sin((\omega+2i\Delta\omega)t +\phi_i(t))
$$
これは、例えばどういう状況でしょうか?
光で言えば、ランプの光が相当します。
ランプは、色々な波長の光が出ます。
更に、ランプから発生する光の位相は、固定されてもいないため周期性が現れません。
まとめ
わずかに周波数が異なるサイン波を重ね合わせた時の挙動を解説しました。
・2個のsin波を重ね合わせると、うなりがうまれる
・100個ほど、位相差0で重ね合わせるとパルスになる。
・固定のランダム位相差を追加すると、パワーのばらつきが大きいが周期性がのこる
あとがき
最近モードロックレーザーの発振原理について調べることがあり、それを下敷きに記事を書きました。
ランダム位相にしても周期性が残る点が意外で、コヒーレンスとは何か?を考え直すいい機会でした。
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参考文献
モードロックはパルスレーザーの発振方法の一つです。今回はレーザーの発振方法には立ち入ることが出来ませんでしたが、レーザーの原理や構造に興味があるという方におすすめの教科書です。



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